ブルガダ症候群(Brugada症候群)

ブルガダ症候群(Brugada症候群)は、1992年にPedro Brugada、 Joseph Brugada により発見された特徴的な心電図パターンを示し突然死を生じる可能性のある症候群のことです。

明らかな心臓の形態や機能の異常がないのにもかかわらず、心筋梗塞を思わせるST上昇を認め、突然心室細動発作をきたし突然死をとげた8症例が報告されたことがはじまりになります。

その後、Brugada が発見した特徴的な心電図パターンは特に夜間の若年青年を中心に、誘因もなく突然心房細動をきたし死亡することもあったことから、世界中で有名になりました。

ブルガダ症候群に特徴的な心電図パターンとして

  • Coved型(Type1):上向きに凸のST上昇を示すパターン
  • Saddle Back型(Type2,Type3):馬の背のように一時凹になりながら二峰性のST上昇を示すパターン。Saddle backの程度に応じてType2とType3にわかれます。

がありますが、診断確定には、「J点またはST部分が基線から0.2mV以上上昇するType 1のcoved型ST上昇を認めること」が必須になりました。

ただし、現在は不整脈などの既往歴がある場合や失神の家族歴などある場合は早期医療介入が必要になるものの、健康診断などで無症候性に見つかることもあります。そのため、「ブルガダ症候群のうち、どの方が治療する必要があるか」を振り分ける事が重要であるとされています。

ブルガダ症候群の疫学

ブルガダ症候群は比較的東アジアで有病率が高い疾患です。診断基準に必要なCoved型ST上昇を示す方は、欧米の成人では0.02〜0.15%であるのに対し、日本の成人では0.1〜0.3%であると報告されています。

Saddle Back型ではさらに有病率が高く、40歳以上(平均年齢58歳)の方の有病率は全体で0.7%、男性で2.14%と報告されています。

心電図の特徴的な所見が出始めるのが、30歳代〜40歳代に初めて出現する場合が多く、平均年齢は45歳であり、突然死の平均年齢は57歳といわれています。

逆に小児期でブルガダ症候群をきたす例は少なく、日本人学童での有病率は0.005%ときわめて少なくなります。

ブルガダ症候群は比較的東アジアで有病率が高い疾患です。診断基準に必要なCoved型ST上昇を示す方は、欧米の成人では0.02〜0.15%であるのに対し、日本の成人では0.1〜0.3%であると報告されています。

Saddle Back型ではさらに有病率が高く、40歳以上(平均年齢58歳)の方の有病率は全体で0.7%、男性で2.14%と報告されています。

心電図の特徴的な所見が出始めるのが、30歳代〜40歳代に初めて出現する場合が多く、平均年齢は45歳であり、突然死の平均年齢は57歳といわれています。

逆に小児期でブルガダ症候群をきたす例は少なく、日本人学童での有病率は0.005%ときわめて少なくなります。

ブルガダ症候群の遺伝的背景

ブルガダ症候群の遺伝的背景として、心筋Naチャネルの機能低下をもたらす変異が300種類以上方向されていますが、その中でも最もブルガダ症候群とのかかわりが深い遺伝的背景は「SCN5A」という心筋チャネルαサブユニット遺伝子と呼ばれるものです。

ブルガダ症候群の原因遺伝子として最も有病率が高く、変異検出率は15〜30%にも上ります。

SCN5A の変異を持ったブルガダ症候群の特徴はその予後の悪さ。実際、SCN5Aの変異を持った方60例と変異をっ持たない355例を解析した結果によると、SCN5Aの変異が持った方方は初回の心イベントの発生年齢が有意に低く、心イベント発生率も高く、累積生存率も低くなりました。

ブルガダ症候群の診断基準

ブルガダ症候群は「有症候性ブルガダ症候群」と「無症候性ブルガダ症候群」の2つに分かれており、

  • 有症候性ブルガダ症候群:心電図所見1項目と主所見の4つのうち1つを満たす場合
  • 無症候性ブルガダ症候群:心電図所見1項目のみで主所見臨床歴がない場合

とされています。なお、主所見の他に副所見というのもあり、リスク評価の際に参考になります。

心電図所見・主所見・副所見の概要は次の通りです。

【ブルガダ症候群の心電図所見】

  • 自然発生のタイプ1 Brugada心電図(正常肋間あるいは 高位肋間記録)
  • 発熱により誘発されたタイプ1 Brugada心電図(正常肋 間あるいは高位肋間記録)
  • 薬物負荷試験にてタイプ1 に移行したタイプ2 またはタ イプ3 Brugada心電図

【ブルガダ症候群の主所見】

  • A. 原因不明の心停止あるいは心室細動または多形性心室頻泊が確認さ れている
  • 夜間苦悶様呼吸 を呈する
  • 不整脈原性が疑われる失神がある
  • 機序や原因が不明の失神がある

【ブルガダ症候群の副所見】

  1. 臨床歴
    • A. 他の原因疾患を認めない30歳以下発症の心房粗動・細動
  2. 家族歴
    • B. ブルガダ症候群と確定診断されている
    • C. 発熱時発症,夜間就眠時発症,あるいはブルガダ症候群を悪化させる薬物との関係が疑われる心臓突然死を認める
    • D. 45歳以下の原因不明の心臓突然死を認め、剖検所見で原因が特定されていない
  3. 遺伝子検査結果(保険適応外)
    • E. ブルガダ症候群を特定する病原性遺伝子変異(SCN5A)を認める

ブルガダ症候群のリスク層別化

現在では、ブルガダ症候群の「リスクの層別化」が行われ、それぞれに対して治療の介入のポイントが変わってきます。

ブルガダ症候群で「高リスク」の方は「心肺停止の既往や心室細動を認める例」です。これらの方はICD植込みのクラスIの適応となります。

ブルガダ症候群で「中高リスク」の方は「不整脈原性失神のある方、自然発生したType1のブルガダ心電図の方、男性の方」です。これらが認められれが、ICD植込みのクラスIIaの適応となります。

一方、「中低リスク」の方は「非不整脈原性失神の方、EPS(2 連期外刺激以下)での 心室細動が誘発される方、突然死の家族歴をもつ方、SCN5A遺伝子変異を持つ方」であり、これらの方はすぐな除細動の適応とはならず慎重な経過観察となります。

このように、一言でブルガダ症候群といっても、その状態により大きく治療方法が変わってくるのです。

ブルガダ症候群の治療

ブルガダ症候群の治療は大きく分けて薬物治療と非薬物治療に分かれます。

薬物治療

突然死予防に最も確実なのは、植込み型除細動器(ICD)であり、薬物療法は確実性に乏しく、高レベルのエビデンスもありません。

しかし、ICD植込みができず心室細動を止めたい場合やない場合や心室細動の発症予防には薬物療法が必要なケースがしばしばあります。

例えば以下の薬物が使用されます。

  • イソプロテレノール:ブルガダ症候群で心室細動ストームが発生した際に使用されます。カルシウム電流を増加させ、心拍数増加に伴いを一過性外向きK電流抑制する作用があります。通常、低用量から持続点滴で投与します。
  • キニジン:一過性外向きK電流を抑制する薬理作用があり、心室細動を予防します。心室細動を予防する薬剤として最も豊富なエビデンスがあります。
  • シロスタゾール:PDE IIIの阻害薬で、カルシウム電流を増加させます。また心拍数増加により一過性外向きK電流を減少させ、心室細動発作を予防する.
  • ぺプリジン:IV群の抗不整脈薬の1つです。本来カルシウム拮抗薬ですが、一過性外向きK電流を含むカリウムチャネルも抑制します。

非薬物治療

植込み型除細動器とカテーテルアブレーションが非薬物療法として挙げられます。

植込み型除細動器(ICD)は、ブルガダ症候群の患者さんの突然死予防に有効であることが照明された唯一の治療方法です。

前述のような心肺停止の既往や心房細動を呈した場合などは、ICD装着が非常に強く推奨されます。

ただし、

  • ICD装着のために入院治療が必要で、治療費や休業などに伴う経済的な負担があること
  • 携帯電話などの電磁波の影響にも注意が必要なこと
  • ペースメーカー同様、MRI検査をはじめとした強い磁場をさける必要があることなどが主な注意点となります。

近年皮下植込み型除細動器(S-ICD)といって、心臓の中にリード電極を使用しない方法も開発されましたが、外から本体が目立ちやすくなったり、S-ICD本来のデメリットがあるので担当医師と十分話し合う必要があるでしょう。

また、「カテーテルアブレーション」といって、電気経路を高周波アブレーションにより修正し、心電図波形を正常化する試みがされています。

ICD除細動を頻回に行っている場合などに適応になる可能性があります。また、アブレーションと関連して、真空内電位を測定して、マッピングするシステムも活用されています。

参考文献