カテコラミン誘発多形性心室頻拍

概要

カテコラミン誘発多形性心室頻拍は、交感神経活性を高める運動や情動の変化あるいはカテコラミン投与により2方向性あるいは多形性の心室頻拍が誘発され、心室細動に移行して失神や突然死を起こす致死的不整脈の一つです。

遺伝性不整脈のなかでも、カテコラミン誘発多形性心室頻拍は極めて致死性の高い疾患であり、有病率は1万人に1人程度と推定されているが正確な有病率はわかっていません。

疫学

カテコラミン誘発多形性心室頻拍の患者の安静時心電図には異常はなく、心臓超音波検査やMRI、CTなどでも構造的異常は認められない。

通常は、運動や感情ストレスによって発生することが多く、初発症状は失神であることが多い。
初発症状の失神は20歳まで(主に7~12歳)に発症することが多いが、稀に心停止の場合もある。

1 拍ごとに QRS 波の軸が 180°変化する二方向性心室頻拍が特徴的であり、多形性心室頻拍を発症することもある。

心室頻拍は自然停止することもあるが、心室細動へ移行することもあり、心停止が CPVT の初発症状であることもしばしば見受けられる。

心室頻拍に加えて、しばしば洞不全症候群や心房細動を合併する。

予後は悪く、多くの報告で10年生存率が60%くらいであるとされています。
しかし、近年の治療法の確立により予後が改善されてきています。

遺伝的背景

カテコラミン誘発多形性心室頻拍の発症に関与する原因遺伝子は、数種類とされている。

遺伝子の変異により、筋小胞体に貯蔵されたカルシウムイオンのリアノジンレセプターからの異常放出が起こり、交感神経活性化によって心室頻拍を発生させる。

カテコラミン誘発多形性心室頻拍の原因遺伝子は、心臓リアノジンレセプター遺伝子である「RYR2」が最も頻度の高くなっており、カテコラミン誘発多形性心室頻拍の60%程度の患者において特定されています。

遺伝子名蛋白頻度(%)
RYR2リアノジンレセプター60~65
CASQ2カルセクエストリン1~2
CALM1カルモジュリン不明(まれ)
TRDNトリアジン不明(まれ)
ANK2アンキリン不明(まれ)
KCNJ2カリウムチャネル不明(まれ)
CALM2カルモジュリン不明(まれ)
CALM3カルモジュリン不明(まれ)
参照:臨床検査 62巻9号 (2018年9月)カテコラミン感受性多形性心室頻拍(CPVT)

カテコラミン誘発多形性心室頻拍の診断基準

運動あるいはカテコラミン刺激によって誘発される多源性の心室性期外収縮、二方向性心室頻拍や多形性心室頻拍によって診断されます。

1.二方向性心室頻拍や多形性心室頻拍、多源性の心室性期外収縮が運動ないしはカテコラミン刺激によって誘発されるもの。ただし、心電図が正常で器質的な心異常がなく、ほかにも心室性不整脈の原因を伴わない。

2.CPVT の原因となる遺伝子変異を有するもの(発端者ないしはその家族)。

3.二方向性心室頻拍や多形性心室頻拍、多源性の心室性期外収縮が運動によって誘発された、器質的な心異常のない、CPVT 症例の家族。

4.二方向性心室頻拍や多形性心室頻拍、多源性の心室性期外収縮が運動ないしはカテコラミン刺激によって誘発される、心電図が正常で器質的な心異常がなく、冠動脈疾患を有さない 40 歳以上の症例も診断が考慮される。

参照:臨床検査 62巻9号 (2018年9月)カテコラミン感受性多形性心室頻拍(CPVT)

治療

遺伝性不整脈のなかで、カテコラミン誘発多形性心室頻拍はきわめて致死性の高い疾患であるため、運動制限や精神的なストレスの回避といった生活制限のほかに、心室不整脈の予防のための薬物治療が推奨されています。

薬物治療

不整脈発作の予防のためにβ遮断薬とフレカイニドの投与が推奨される。

低用量での投与は不整脈発作の危険を高めるので、忍容性を示すかぎり投与量を増加する。
服薬中断から不整脈発作をきたす確率が高いため、服薬順守のための患者教育と血中薬物濃度測定が必要です。

運動負荷試験中の心室性不整脈(心室頻拍・期外収縮)の完全な抑制を目標に、薬剤の追加や増量を
行う.

また、運動負荷試験やホルター心電図検査を定期的に行うことで、薬物の効果を判定することも重要です。

β遮断薬

発作予防のために、交感神経刺激を減少させるための β 遮断薬が第一選択薬として用いられます。

フレカイニド(Na遮断薬)

β遮断薬投与中に不整脈発作をきたした例には、フレカイニドの追加を考慮します。

ベラパミル

十分量の薬物治療ならびに非薬物治療を行っても不整脈が再発する例では投与を考慮します。

非薬物治療

植込み型除細動器(ICD)

適切な薬物治療の効果がみられない場合には、必要な治療と考えられます。
しかし、カテコラミン誘発多形性心室頻拍においてはICDによる電気ショックがストレスとなり、さらに不整脈を誘発する懸念などの問題点もあります。

カテーテルアブレーション

薬物抵抗性、ICDの頻回作動、初発のPVC起源と2発目のPVC波形がいつも一定である症例は、カテーテルアブレーションの適応とされています。

交感神経節切除術

わが国ではあまり行なわれていませんが、左心臓交感神経節切除はCPVTに有効な治療法です。

遺伝子治療

将来、遺伝子治療の可能性が期待されています。

参考文献