進行性心臓伝導障害のお薬情報

心臓伝導障害は、心臓の活動電位の形成異常とその伝導障害とに大別されます。

前者を代表するのは洞不全症候群であり、後者は伝導障害の部位によって、洞房進出ブロック、房室ブロック、ヒス束下部ブロック、脚ブロックに区分されます。心臓伝導障害のなかで遺伝性が顕著なものの1つが、進行性心臓伝導障害(progressive cardiac conduction disturbance: PCCD)です。

進行性心臓伝導障害は、進行性の房室ブロック、脚ブロックを特徴とし、刺激伝導系の線維変性によって失神やペースメーカ植込みの原因となる遺伝性不整脈で、家族性心臓伝導障害(progressive familial heart block: PFHB)あるいはLenégre-Lev病ともよばれます。

ヒス束以下の伝導障害のためQRS幅の延長を示します。

図1.心電図波形

現在、進行性心臓伝導障害には確固たる診断基準が確立されていないため、原因遺伝子の種類や変異の頻度など、遺伝的背景に対する知見も明白ではありません。

そのため、リスク評価や治療指針における遺伝子検査の臨床的有用性は限定的であり、保険診療の対象とはなっていません。
進行性心臓伝導障害患者における疾患関連遺伝子変異の陽性率は明らかではありません。

しかし、骨格筋ミオパチーや基礎心疾患を伴わない典型的な進行性心臓伝導障害のなかでもっとも主要な遺伝子は、SCN5A、LMNA、非特異的カチオンチャネル遺伝子(TRPM4)の3つです。
これらが関連しているという報告があります。今後の研究が待たれます。

進行性心臓伝導障害に対する有効な薬物治療のエビデンスはありません。
2013年のHeart Rhythm Society/European Heart Rhythm Association/ Asia Pacific Heart Rhythm Society 合同ステートメントでは進行性心臓伝導障害に対するデバイス治療の適応に関して、症状がある場合や3度房室ブロックではペースメーカ植込みが推奨されます。

1度房室ブロックの有無によらず、二束ブロックであっても、進行性心臓伝導障害と診断された時点でペースメーカの植込みを検討してよいです。

参考文献

2022年2月7日更新「遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017年改訂版)」を主軸に書いています。