目次
QT短縮症候群とは
QT延長症候群は、心電図におけるQ波とT波間隔の短縮を特徴とした、不整脈の可能性が高い病気です。
不整脈には、動悸などの症状を引き起こす心房細動、心臓突然死につながる危険な不整脈(心室細動や持続性心室頻拍など)があります。
半数程度の患者さんが40歳までに心肺停止を起こすと推測されている危険な病気です。
QT短縮症候群の原因
心筋細胞内で電解質の動きを調整する“遺伝子”の変異が原因であり、現在6種類の遺伝子(SQT1~SQT6)変異が報告されています。
電解質には、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどがありますが、SQT1〜SQT3ではカリウム、SQT4〜SQT6ではカルシウムを調整する遺伝子に変異が起きることがわかっています。
電解質のバランスが崩れることは、心電図上でQ波とT波の短縮として現れ、不整脈が起きやすい不安定な状態につながります。
QT短縮症候群の症状
不整脈が起きていない場合は無症状です。
不整脈が心房細動の時には、動悸・めまいなどの比較的軽い症状が起こります。
心室頻拍や心室細動などの危険な不整脈では、失神や心肺停止となり、最悪の場合は心臓突然死となります。
不整脈が起きるタイミングについて、安静時や就寝時に多いことも特徴です。
疫学
有病率
有病率(病気を持っている人の割合)は0.02%〜0.4%程度と推定されていますが、非常に稀な疾患のため詳しい有病率はわかっていません。
発症年齢・性別
危険な不整脈が起きる年齢は、“1歳未満”と“20〜40歳”の二つの時期にピークがあり、平均で26歳です。
病気を持っている患者さんのうち、男性が8割程度であることから、若年男性に多い病気といえます。
家族歴
QT短縮症候群の患者さんのうち“4人に1人”が、血縁関係にある家族の若年突然死を経験しています。
また、およそ半数の家系にQT短縮症候群が認められます。
このことから、QT短縮症候群と診断された場合、血縁関係にあるご家族はQT短縮症候群である可能性が高くなりますので、検査を検討する必要があります。
予後
症状の程度や家族に同じ病気を持っているかどうかによって、予後は異なると考えられています。
一度でも心肺停止を経験したことがある場合、心肺停止の危険性は年間10%程度です。
一方で、心肺停止を経験したことがない場合は、年間0.4%です。
心肺停止が起きる確率は、40歳までに40%−50%程度と高い数値となっています。
検査
臨床症状
自覚症状がある人は、全体の半数程度です。
症状のうち最も多いのは心肺停止(意識消失)、次に失神(短時間の意識消失)、動悸、胸痛の順になっています。
QT短縮症候群と診断されるきっかけは、心肺停止が40%以上で最多です。
心電図
最も基本的な検査です。心電図でのQ波とT波の間隔、形の変化から診断します。
注意点は、QT短縮症候群の患者さんでもQT間隔が基準より延長している場合や、健康な人でも基準より短縮している場合があることです。
さらに、心拍数80回/分程度での検査が推奨されているため、心拍が早いまたは遅い場合には診断が難しくなります。
そのため、一回の検査で診断できない場合もあり、学校検診や企業検診などの定期的な心電図検査が重要です。
負荷試験
QT短縮症候群では、他の遺伝性不整脈のような負荷試験法は確立されていません。
遺伝子検査
QT短縮症候群では、SQT1〜SQT6の6種類の原因遺伝子がわかっています。
ただ、QT短縮症候群の患者さんでも遺伝子検査で異常が出ない場合も多く、あくまで診断の補助として行われています。
現在、QT短縮症候群の遺伝子検査は保険適用外ですが、検査が必要と判断された場合、自費ではなく、研究センターの研究費にて行うこともあります。
治療
不整脈発作時の治療
危険な不整脈(心室細動や心室細動の前段階)の場合には、心肺蘇生法をしつつ速やかに電気的除細動(AED)や薬物的除細動(抗不整脈薬)が必要となります。
心房細動など軽い症状を伴う不整脈の場合でも、電気的除細動や薬物的除細動を行うことがあります。
生活指導
運動制限などの生活指導について推奨されていることはありません。
理由として、QT短縮症候群の不整脈は、安静時や就寝時に起きることが考えられます。
埋め込み型除細動器
QT短縮症候群の心臓突然死予防には、埋め込み型除細動器が最も重要な治療法とされています。
埋め込み型除細動器による治療とは、危険な不整脈を起こした時に自動で電気的除細動を行う機械を、あらかじめ手術で体内に埋め込む方法です。
過去に、心肺停止を起こしたことがある場合、心肺停止ではないが長時間の心室頻拍を起こしたことがある場合には、埋め込み型除細動器が必要となります。
危険な不整脈を起こしたことはなくても、血縁関係で心臓突然死のご家族がいれば、埋め込み型除細動器を検討することがあります。
ただし、QT短縮症候群に対する埋め込み型除細動器では、誤作動が6割程度と多いといわれています。この理由として、若年の患者さんが多く、激しい運動による心拍数増加の頻度が多いこと、除細動の適応ではない心房細動の頻度が多く、心房細動に対して誤って除細動してしまうこと、などが考えられています。
薬物治療
QT延長症候群の薬物治療は、埋め込み型除細動器の補助的な治療と考えられています。
薬物治療の目的は、心房細動と危険な不整脈の予防です。
心房細動では動悸などの軽い症状が多いのですが、長時間持続すると脳梗塞などの塞栓症の危険性があることや、将来弁膜症の可能性があることなどから、患者さんによっては薬で予防します。
さらに、埋め込み型除細動器を使用中に、危険な不整脈を繰り返している場合や、何かの理由で埋め込み型除細動器を使用することができない場合にも薬物治療を行います。
薬物治療には、抗不整脈薬のうちナトリウムチャネル遮断薬である“キニジン”の有効性が報告されています。
周りの人からの理解
QT延長症候群は、安静時、就眠時など、いつでも危険な不整脈・心肺停止を起こしてしまう可能性があります。
心肺停止の場合、近くの人の心肺蘇生法が最も大切になります。
講習会などを通して、心肺蘇生法を理解しておいてほしいと思います。